今回の食欲不振は、特定の食物に限らず全ての食物を摂取する意欲のない状態を言います。

中医学では「納呆(のうほう)」と呼びます。

病気の中心は胃腸にあり、胃腸機能の低下や代謝機能の低下によって起きるのですが、その原因や随伴症状によって治療方法が異なる為、詳しく解説していきたいと思います。

現代医学で言う急性・慢性胃炎、胃腸神経症、拒食症、精神疾患の一症状として現れる場合には、今回の考え方が参考になります。

食欲不振の5つの原因

中医学から診た時の食欲不振の代表的な原因は5つあります。

 

①ストレス(肝胃不和)

②食べ過ぎ(食滞)

③暴飲暴食(脾胃湿熱)

④運動不足・病後(胃陰虚)

⑤胃腸虚弱(脾胃虚弱)

 

食欲不振はこれらの原因が単独で起きる事もありますが、複数の原因が組み合わさって起こる事もあります。

 

食欲不振の病因病機

食欲不振のタイプ

①ストレス・イライラタイプ(肝火上炎)

ストレスは気の流れを滞らせ、その滞りが熱化し耳を巡る経絡に侵入すると、耳鳴りや難聴になります。

ストレス・イライラタイプの耳鳴り・難聴の特徴

  • しゃっくりやゲップがよく出る
  • ストレスによって悪化する
  • お腹に張り感や痛みがある
  • 吐き気がある
  • ガスがよく溜まる
  • 胃もたれやムカムカもある

改善方法
原因がストレスからきている為、趣味を満喫したり呼吸法や運動を取り入れて、ストレスを流す事が大切です。
また、アロマオイルがお好きな方は柑橘系の香りを嗅ぐとストレス解消に繋がります。

おすすめのツボ

1.内関

足の外くるぶしの斜め下前部分に取ります。
ストレスから来る胃の不快感や吐き気を取り除く効果があります。

2.中脘

お腹のみぞおちとおへそのちょうど真ん中に取ります。
胃の不調を改善してくれるツボです。

3.足三里

膝のお皿の下から、指4本分下(人差し指〜小指)下の、スネの骨の外側に取ります。
中脘と同じく、胃の不調を改善してくれるツボです。

4.行間

足の親指と人差し指の付け根に取ります。
顔や頭に熱感を取る効果があります。

 

②食べ過ぎタイプ(食滞)

食べ過ぎにより胃腸に負担がかけ続けた事で機能が低下してしまい、胃に内容物が停滞している状態です。

このタイプの食欲不振の特徴

  • お腹の張り感が強い
  • 吐き気や胸焼けもある
  • 臭い(腐臭)の強いゲップが出る
  • おならやゲップが出ると楽になる

 icon-chevron-circle-right 改善方法

  • まずは、食べ過ぎないようにする
  • ゆっくり時間をかけて食べる(よく噛む)
  • 消化の悪い揚げ物やお肉類は控えめにする
  • 夜遅い時間の食事は避けるなど。

おすすめのツボ

1.中脘

お腹のみぞおちとおへそのちょうど真ん中に取ります。
胃の不調を改善してくれるツボです。

2.天枢

お臍から、指3本分(人差し指〜薬指)外にそれぞれ取ります。
腸の機能を調整する効果があります。

3.足三里

膝のお皿の下から、指4本分下(人差し指〜小指)下の、スネの骨の外側に取ります。
中脘と同じく、胃の不調を改善してくれるツボです。

 

③暴飲暴食タイプ(脾胃湿熱)

脂っこいものや味の濃いもの、甘いものやアルコールを過度に摂ると、体内に余分な水分が滞り、熱(湿熱)が生じます。

 

暴飲暴食タイプの食欲不振の特徴

  • 上腹部のつかえ感がある
  • 吐き気がある
  • 油物を見たり、匂いを嗅ぐだけで気持ち悪くなる
  • 頭や体の重だるさも感じる
  • 痰が多い
  • 便もスッキリ出ない

icon-chevron-circle-right 改善方法
食生活を改善させて、運動などをして体を動かすようにしてみてください。
適度な運動をして汗をかく事で、体の余計な水分を出す事が出来ます。

おすすめの食材:キャベツ、大根、たまねぎ、とうがん、白菜、きのこ類、あずき、納豆、しそ、昆布、海苔、烏龍茶、プーアル茶など

おすすめのツボ

1.曲池

肘の関節の外側にあり、肘を曲げた時に出来るシワの先端に取ります。
身体の熱を取る効果があります。

2.中脘

お腹のみぞおちとおへそのちょうど真ん中に取ります。
胃の不調を改善してくれるツボです。

3.陰陵泉

足の内くるぶしから、スネの骨の内側を上へ辿っていくと、指が止まる部位があります。
その部位の指一本分後ろに取ります。
体内の余計な水分を取る効果があります。

 

④運動不足・病後(胃陰虚)

運動不足や長引く病気の後で、胃の潤いが減っている状態(胃陰虚)です。
胃は内容物を消化した後、滞りなく通過させる必要がありますが、胃の潤いが不足していると中々通過出来ずに、滞ってしまいます。

このタイプの食欲不振の特徴

  • 空腹感はあるが、食べようとすると食べられない
  • 口の乾き、唇・舌の乾燥がある
  • 胃のあたりに痛みや熱感がある
  • 吐き気も出る

 icon-chevron-circle-right 改善方法

食べ物に気をつけるのはもちろんですが、睡眠をしっかり取るようにしましょう。
遅くても0時前には寝るようにしてみてください。

おすすめのツボ

1.中脘

お腹のみぞおちとおへそのちょうど真ん中に取ります。
胃の不調を改善してくれるツボです。

2.足三里

膝のお皿の下から、指4本分下(人差し指〜小指)下の、スネの骨の外側に取ります。
中脘と同じく、胃の不調を改善してくれるツボです。

3.内庭

 

⑤胃腸虚弱タイプ

生物や冷たいものの食べ過ぎ、運動不足などにより胃腸の代謝機能が低下している状態です。
空腹感がなく、食べてもするに膨満感を生じる状態です。

このタイプの耳鳴り・難聴の特徴

  • 疲労で悪化し、休むと症状が軽減する
  • 疲れやすく、気力がない
  • 泥のようなベタベタした便が出る
  • 胃下垂もある

 icon-chevron-circle-right 改善方法
お腹の負担を軽くすることが大切です。

  • まずは、食べ過ぎないようにする
  • ゆっくり時間をかけて食べる(よく噛む)
  • 夜遅い時間の食事は避けるなど。

また、疲れてしまうくらい働いたり動き過ぎたりするのも禁物です。
日中は疲れない適度の運動をし、夕方以降は体をゆっくり休めてあげましょう

おすすめのツボ

1.足三里

膝のお皿の下から、指4本分下(人差し指〜小指)下の、スネの骨の外側に取ります。
中脘と同じく、胃の不調を改善してくれるツボです。

2.太白

足の第一指の内側で、骨の出っ張っている所のすぐ後ろに取ります。
胃腸機能を高める効果があります。

3.太渓

足の内くるぶしとアキレス腱の間の真ん中に取ります。
腎の力を強めてくれる効果があります。

最後に

如何でしたでしょうか。

食欲不振は日常的にみられる症状で気にされていない方もいらっしゃるかもしれませんが、大きな病気が原因となっている可能性もあります。

慢性的にみられる場合や体重減少などがある場合は、一度専門医に診てもらうようにしてみてください。

 

中医学から診た各種疾患

自律神経調整コースの内容を見る