今、一番新しい睡眠導入剤のベルソムラとは?
あなたは、ベルソムラというお薬を聞いた事がありますか?
もしかしたら、飲まれている方もいるかもしれませんね。
このベルソムラ、以前のブログで紹介したロゼレムのように、副作用が少ない睡眠導入剤という事で注目されています。
今回は、このベルソムラについてお伝えします。
目次
ベルソムラとは?
まずは、ベルソムラの説明から
一般名:スボレキサント 商品名:ベルソムラ錠10mg、ベルソムラ錠15mg、ベルソムラ錠20mg 製造販売元:MSD株式会社 承認年月日:10mg=2016年9月13日、15mg・20mg=2014年9月26日 販売開始年月:10mg=2016年12月15日、15mg・20mg=2014年11月26日 用法:1日20mgを就寝前に。高齢者は15mgを就寝前に。 効果持続時間:約8時間 半減期:12.5時間 効能または効果:不眠症 薬効薬理:ベルソムラは、オレキシン受容体拮抗薬で、覚醒を調整するオレキシンの活動を抑える事で、過剰な覚醒状態を抑える事で、身体を睡眠状態へ向かわせる。 名前の由来:belle(=beautiful)+som(=sleep)が由来で、「美しい眠り」という意味。
ベルソムラの特長
ベルソムラは、覚醒を促進するオレキシンという物質が、受容体に結合するのを阻害する事で、覚醒を状態を抑制し、睡眠を促す作用を持ちます。
ロゼレムやベンゾ系・非ベンゾ系などのように「睡眠を促す」のではなく、「覚醒を抑制する」というアプローチ方法で、眠れない悩みを持つ方へ処方されています。
また、ベンゾ系・非ベンゾ系のように、GABAに影響を及ぼし依存性を示す事がない為、長期的な使用が可能と言われています。
オレキシンとは
視床下部に存在する脳内物質で、
- 覚醒の維持
- ストレス反応や自律神経の働きを促す
- 正常細胞を増殖させる
- 腫瘍細胞の増殖を抑制する
などの作用があります。
実際の効果は?
ベルソムラは、即効性があると言われていて、服用後の約30分ほどで自然な眠気が出てくると言われています。
また、製薬会社が作成している添付文書に、入眠にかかる時間や総睡眠時間、中途覚醒から再入眠に至る時間などの臨床試験の結果が記載されています。
入眠までにかかる時間(睡眠潜時)
患者さんの日誌だと…
- 低容量(成人:20mg、高齢者:15mg)で約15分短縮(64分→49分)
- 高容量(成人:40mg、高齢者:30mg)で約16分短縮(68分→52分)
- プラセボ群で約10分短縮(67分→57分)
睡眠ポリグラフだと…
- 低容量(成人:20mg、高齢者:15mg)で約38分短縮(69分→36分)
- 高容量(成人:40mg、高齢者:30mg)で約28分短縮(62分→34分)
- プラセボ群で約22分短縮(66分→44分)
という結果が出ていて、処方容量の低容量とプラセボ群を比べると、患者さんの自覚的な睡眠潜時で約6分、睡眠ポリグラフだと約16分短くなっているのが分かります。
総睡眠時間・中途覚醒
患者さんの日誌だと
- 低容量(成人:20mg、高齢者:15mg)で約27分延長(322分→349分)
- 高容量(成人:40mg、高齢者:30mg)で約36分延長(316分→352分)
- プラセボ群で約15分延長(315分→330分)
という結果が見られ、処方容量の低容量とプラセボ群を比べると、約12分長くなっているのが分かります。
また、睡眠ポリグラフで中途覚醒の時間を診たところ
- 低容量(成人:20mg、高齢者:15mg)で約54分短縮(120分→66分)
- 高容量(成人:40mg、高齢者:30mg)で約59分短縮(118分→59分)
- プラセボ群で約19分短縮(115分→96分)
という結果がみられ、プラセボ群と比べて睡眠潜時が短くなり、総睡眠時間が長くなったと結論づけています。
副作用は?
即効性のあるベルソムラですが、効果持続時間が8時間、半減期が12.5時間と少し長い為、翌朝の持ち越し効果が出てしまう事が多いそうです。プラセボ群に比べてREM睡眠時間が長くなり、夢を見る時間が多くなるようです。
- 日中の過剰な眠気
- めまい
- ふらつき
- 疲労感
- 頭痛
- 入眠時幻覚
- 悪夢
- 金縛り
- 夢遊症
などがあると言われていて、車の運転などの機械の操作の従事は避けるように言われています。
ただし、ベンゾ系・非ベンゾ系の睡眠薬に比べて、反跳性不眠や離脱症状は少ないと言われていて、12ヶ月服用後もそういった症状は報告されていないようです。
使用上の注意
慎重投与が必要な方
- ナルコレプシーまたはカタプレキシーをお持ちの方
- 高齢者
- 重度肝障害の方
- 重度の呼吸障害の方
- 脳に器質的な障害をお持ちの方
飲み合わせ・食べ合わせ
併用が禁止されているお薬
以下のお薬は、代謝が遅れ、副作用が強く出てしまう恐れがある為、併用を禁止されています。
- 抗生物質(クラリスロマイシン)
- 抗真菌薬(イトラコナゾール、ボリコナゾール)
- 抗エイズ薬(リトナビル、サキナビル)
- C型慢性肝炎治療薬(テラプレビル)
併用注意のお薬
また、禁止ではありませんが、同様の理由で注意が必要なお薬に
- 高血圧・狭心症・不整脈のお薬(ジルチアゼム、ベラパミル)
- 抗真菌薬(フルコナゾール)
薬の作用を弱めてしまうお薬
- 抗結核薬(リファンピシン)
- 抗痙攣薬(フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン)
その他、注意すべき飲み合わせ
安定剤や抗うつ薬などは、互いの作用を強めあい、副作用が出やすくなってしまう可能性があると言われています。
また、アルコールも一緒には飲めません。
妊娠・授乳
妊婦さんへの投与は禁止されているわけではありませんが、出来る限り控え、服薬中の授乳も中止するのが基本のようです。
どちらも医師の判断によりますので、主治医に良く相談されてみてください。
まとめ
如何だったでしょうか?
ベルソムラは、ロゼレムと同様、副作用や依存性が少なく、長期服用が可能と言われているお薬の為、比較的安心して飲めるお薬と言えると思います。
ただ、オレキシンには覚醒だけではなく、正常細胞の増殖や腫瘍細胞の抑制などの作用もある為、オレキシンの作用を弱める事自体には副作用があると言えます。
薬全般に言える事ですが、漫然な投与を控えて、なるべく自分自身で眠れる方法を模索しつつ、服薬をするというスタンスが良いかもしれません。