睡眠薬をやめるに当たって

「1日でも早く、今飲んでいる薬をやめたい。」

当院にいらっしゃる方のお悩みで、一番多いのがこちらです。

当院には、薬をやめたくてご来院される方がほとんどですが、薬と上手に付き合っていければそれでも良いとおっしゃる方もいらっしゃいます。

薬をやめるに当たって、一番大事な事は、

「薬をやめたいと強く思っているかどうか。」

です。

もちろん、ほとんどの方が薬を飲まずに眠りたいと思っているとは思いますが、

「出来ればやめたいけど、薬を減らすとまた眠れなくなるからやめられない。」

というお気持ちであれば、まだやめる段階ではないと思います。

今回は、睡眠薬をやめるに当たってのお話をしたいと思います。

 

睡眠薬の離脱症状は出るものと思って、減薬に臨む

個人個人の必要性に合わせて減薬を行っていけば、離脱症状は最小限に抑える事はできますが、それでも、離脱症状が出る時もあります。

その為、薬をやめる際には、離脱症状は出現すると捉えて、減薬に臨む覚悟が必要です。

そのため、「辛い思いをしても良いから、薬をやめたい。」という気持ちを持っているかどうかが大切になっていきます。

薬をやめるにはまず何よりもあなたの気持ちが整う事が大切です。

友人や家族、主治医に減薬を急かされているように感じていても、焦らずに気持ちが整うのを待ってください。

 

反跳性不眠とは?

あなたは、

「一旦薬を減らしたら、眠れなくなってすぐに元の用量に戻した。」

なんて経験はありませんか?

睡眠薬を常用している場合、薬を減らすと薬を飲んでいなかった頃よりも眠れなくなる事があります。

これを、反跳性不眠と言います。

薬によって、脳の化学物質に対する構造が変化してしまっている為、急に減らすとこういった状態に陥ってしまいます。

特に、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の場合、反跳性不眠が出現しやすいと言われています。

ここで勘違いして欲しくないのは、反跳性不眠とは

あなたの身体が良くなっていない(薬がないと、まだ眠れない)という訳ではない

という事です。

薬を飲み続けた影響によって起きている症状で、身体本来の不調ではないのです。

その為、薬を減らしてすぐに不眠が現れても、すぐに元の用量に戻さずに、辛くても2週間程度が我慢する必要があります。

 

睡眠薬の減らし方

睡眠薬を減らしていくには主なものに1.漸減法、2.隔日法の2つがあります。

 

睡眠薬の減らし方① 漸減法

これは、薬の量を少しずつ減らしていく方法です。

薬を早くやめたいからと、焦って急に1錠減らすのではなく、1錠を3/4量へ減らして服用していき、慣れてきたら1/2、1/4へと徐々に減らしていく方法です。

減らしていく期間としては、一度減らしたら2〜4週間様子をみて、離脱症状が出なかったり、出ても落ち着いて来たら、また同じように減らしていきます。

もしこの期間が過ぎても離脱症状が出ている場合は、数ヶ月かけても良いので、症状が出なくなるまでゆっくりと減らしていく必要があります。

漸減法の例

  1. まず、薬を1錠の1/4だけカットして、3/4錠を飲む
  2. 離脱症状が出ても出なくても、焦らずに2週間は続けてみる。
    (離脱症状が出ても出なくても、2週間は同じ量を服用する。)
  3. もし2週間で離脱症状落ち着いたら、次は薬を1/2にカットして、同じように2週間様子を見る。
  4. これを繰り返していき、少しずつ薬の量を減らしていく。

✳︎最初から1/4減らすのが怖いという方は、薬をヤスリで削って少しずつ減らしていく方法を試してみてください。

 

睡眠薬の減らし方② 隔日法

これは、薬を飲む頻度を少しずつ減らしていく方法です。

今あなたが、1日に1錠服薬をしているとしたら、2日に1錠、3日に1錠へと減らしていき、少しずつ服薬の頻度を減らしていきます。

ここでも大切なのは、薬を減らして出てきた症状は、離脱によるものと捉え、辛くても元の用量に戻さない事が大切です。

 

減薬をするにあたって

この2つに加えて、規則正しい生活や運動、瞑想などを行ったり、刺激制御療法や睡眠制限方法などの認知行動療法や、カウンセリングなどの心理的サポートなどを加えていくと、負担が軽くなります。

また、減薬について日本のガイドラインなどでは

「離脱症状や反跳性不眠が出たら、用量を元に戻す。」

「個人で判断せずに主治医の指示に従ってください。」

と記載があります。

確かに、何の知識もなく闇雲に減らしていくのは危険です。

ですが、減薬方法を具体的に示したアシュトンマニュアルには、

 

  • 減薬速度は厳格に決められたものではなく、柔軟であること。
  • 患者本人が必要性に従って、医師ではなく自分自身で減薬速度をコントロールすること。
  • 離脱の決断は、患者自身で行うものであり、医師に強制されてはいけない。

 

といった記載があります。

離脱症状の種類や程度、減薬にかかる時間は人によって全く異なります。

医師などのサポートを受けつつ、あなた自身が減薬方法の知識を身につけて、身体と相談しながら、忍耐強く、自信を持って、自己責任で減らしていく必要があります。

何より大切なのは焦らないことです。

減薬期間は最低でも6ヶ月はみるべきと言われています。

焦らずゆっくり、時に一歩下がったりしながら、薬を徐々に減らしていってみてください。

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