新しい睡眠障害治療薬レンボレキサント、承認申請へ
3月7日、医薬品メーカーのエーザイ株式会社が、新しい睡眠障害治療薬のレンボレキサントをついに日本で承認申請しました。
アメリカでは既にFDA(米国食品医薬品局)へ新薬承認申請書を提出されている薬です。
レンボレキサントは、覚醒を抑制させるオレキシンという物質の働きを抑える事で自然な睡眠を促す効果があると言われています。
同じ作用機序の薬に、ベルソムラがあります。
ベルソムラは現在処方されている睡眠薬の中で一番新しい薬です。
今回は、新たに承認申請されたレンボレキサントについての内容です。
目次
レンボレキサントとは
創製:エーザイ株式会社
分類:オレキシン受容体拮抗薬
作用機序:覚醒時に分泌されるオレキシンの作用を弱める事により、睡眠導入や睡眠維持を図る
海外では:2019年1月15日、エーザイ株式会社とPardue Pharma L.P.がアメリカ食品医薬品局へ新薬承認申請書提出
レンボレキサントの臨床試験結果の概要
臨床試験①
対象:睡眠維持困難(寝ても途中で目が覚めてしまう)を伴う55歳以上の患者
人数:1006名
期間:1ヶ月
試験内容
対象者を
- レンボレキサント群(5mg or 10mg)
- ゾルピデム群(6.25mg)
- プラセボ群
を飲む3つのグループに分けて1ヶ月服用してもらい
- 寝付くまでの時間
- 睡眠効率(実際に寝ている時間/ベッドに入っている時間)
- 中途覚醒時間
を比べてみました。
その結果、レンボレキサント群はゾルピデム群、プラセボ群と比較して有意に優れている事が確認されました。
との事。
レンボレキサントの有害事象(副作用):頭痛・傾眠
有害事象による試験中比率は、レンボレキサント群とプラセボ群で同比率との事。
臨床試験②
対象:入眠困難・睡眠維持困難のいずれかまたはその双方を伴う18〜88歳の患者
人数:949名
期間:12ヶ月
試験内容
対象者を2つのグループ
- 前半6ヶ月はプラセボ、後半6ヶ月はレンボレキサント(5mg or 10mg)服用
- 前半6ヶ月も後半6ヶ月もレンボレキサント(5mg or 10mg)服用
に分けて、試験を開始して6ヶ月経った時点での1.と2.のグループの違いをベースに、後半の6ヶ月ではどのような変化があったかを主観評価により評価してもらうというものです。
評価項目は以下の3つ。
- 寝付くまでの時間
- 睡眠効率(実際に寝ている時間/ベッドに入っている時間)
- 中途覚醒時間
その結果、レンボレキサント群はプラセボ群と比較して有意に優れている事が確認されました。
との事。
レンボレキサントの有害事象:頭痛・傾眠・インフルエンザ
有害事象による試験中比率は、レンボレキサント5mgとプラセボ薬で同比率。
レンボレキサント10mgではより高頻度だったとの事
ふらつきや持ち越しに対する試験
対象:健康な成人および高齢者
人数:48名
試験内容
対象者を
- レンボレキサント群(2.5mg or 5mg or 10mg)
- ゾピクロン(アモバン、サワイ)群(7.5mg)
- プラセボ群
に分けて8日間服薬をしてもらい、2日目と9日目の朝の車の運転にどれくらい影響が出るのか
を評価する試験です。
それによると、
プラセボ群、レンボレキサント群を服用した対象者は、自動車運転に支障をきたさなかったと言う事が示されました。
との事。
なお、ゾピクロン群は予定された運転試験が終了する前に運転を停止してしまった例もあったとの報告もあったようです。
レンボレキサントの有害事象:頭痛、傾眠、口内乾燥
まとめ
当院の患者さんにも、今回対照薬となったベルソムラやアモバンを処方されている方は多くいらっしゃいます。
「効いている。」という方もいれば「効果はないが副作用もない。」と仰る方もいて、効果や副作用は本当に人それぞれです。
このレンボレキサントが処方薬となり、実際に患者さんの手に渡るのはもうしばらく時間がかかりそうですが、多くの不眠に悩まれている方の福音になる事を願って止みません。