睡眠に効果的な運動の仕方って?
運動をすると、よく眠れるようになるという話は、あなたも聞いた事があると思います。
当院にいらっしゃる方にも、
「運動を始めたら、寝つきが良くなった。」
と仰る方がいます。
確かに、運動をする事で睡眠の質は上がります。
運動が睡眠に与える効果として言われているものに、
- ベッドに入ってから寝付くまでの時間の短縮(寝つきが良くなる)
- 全体的な睡眠時間の延長
- 深い睡眠(ノンレム)時間の延長
- 中途覚醒の減少
- 熟睡感の向上
などがあります。
でも、
「しっかり運動した日でも、睡眠自体に大きな変化はない。」
と仰る方もいます。
どういった違いがあるのでしょうか?
今回は、睡眠の質を上げる為にはどうように運動を活用していったら良いのかをお伝えしたいと思います。
睡眠に良い運動のタイミングとは
運動と睡眠の関係については、日本でも1960年代から色々な試みがされてきました。
一口に運動と言っても、運動の負荷、程度、時間帯、種類、運動習慣の有無、年齢、男女差などによって様々異なってきます。
一番初めに紹介する実験の内容とは、
- 運動習慣のない男子大学生7名に
- 本人が「つらい」と感じない程度の有酸素運動を
- 60分間
- 朝(7:30〜8:30)、夕方(16:30〜17:30)、夜(20:30〜21:30)の3つに分けて
行ってもらい、夜間の睡眠の影響を調査しました。
その結果、寝つきが良くなり、深い睡眠が取れ、熟睡感が一番強かったのは、夜に運動をした群でした。
また夜に運動をした場合、他の時間帯に運動した場合に比べて日中の眠気も少ない事が分かりました。
普通、運動は日中した方が健康的なイメージがありますよね。
なぜ夜に運動をすると睡眠に良い影響が出たのかと言うと、私たちの体温の概日リズムと関わっています。
以前のブログ(「夜型のあなたが、朝方に戻せない理由とは」)で、睡眠と体温の関係はお伝えしました。
私たちの体温は、夜の19時〜20時に一番高くなり、そこから夜中の2時〜3時頃にかけて一番低くなり、また朝に向けて徐々に上がっていくというリズムを持っています。
そして、この
体温が一番高い時から徐々に下がっていく時間帯=一番眠気を感じやすい時間帯
なんです。
実験で、夜に運動した群は、運動をした事により体温が一時的に上昇したタイミングと、体温の概日リズムで一番体温が高いタイミングが重なり、ここから熱の放散と共に体温の低下が一気に進み、強い眠気を誘発したと考えられます。
その為、睡眠に良い運動のタイミングは、寝る数時間前に、汗ばむ程度の有酸素運動を疲れすぎない程度の時間行うと良いと言えます。
運動の負荷はどれくらいが良い?
ただし、運動をする事が誰にとっても睡眠に良いというわけではなさそうです。
ある実験で、1人の被験者を
- 運動をしない
- 15km走を行う
- フルマラソンを行う
- ウルトラトライアスロンを行う
の4条件に分けて、それぞれどれくらい睡眠に影響が出るのかを調べました。
この結果、ウルトラトライアスロンをした後の睡眠では中途覚醒が増し、レム睡眠が減少したという結果から、高負荷の運動は新太的ストレスになり睡眠お質の悪化が認められたという結果が出ました。
他の3つに関しては、変化は見られませんでした。
この事から、
・高負荷の運動は睡眠の妨げになる
・適度な運動であっても、運動をしない場合との変化は見られなかった為、人によって運動が与える睡眠の影響は違う
と言えそうです。
非薬物療法としての運動の意義
また、運動は睡眠だけでなく、
- 不安レベルの低下
- 気分の安定
- 自律神経の調整
と言った側面も持っています。
こういった効果を出す為には、少し汗ばむ程度の運動を週に150分(1日20〜30分程度の運動を週に5〜6回)程度行うと、非薬物療法として作用する可能性があると言われています。
睡眠障害は、不安感が強いとより大きな問題となる場合があります。
「また今日も寝付けなかったらどうしよう。」
「明日重要な会議があるから寝ないといけないのに、そう考えると眠れない。」
と、眠れない事が不安になると同時に、その不安が眠れない原因になっている方もいると思います。
そう言った不安感を軽減させる為にも、運動をする事はとても大切な鍵になりそうです。
現代人の不安感の強さや気分の落ち込みなどは、単純に運動不足も原因のひとつと言われているくらいです。
ただし、運動をしてすぐに睡眠や気分の安定に繋がらなかったとしても、すぐに諦める必要はありません。こういった効果が安定するまでに、最低でも4ヶ月程度はかかると言われています。
焦らず、運動習慣を身につけていけたらと思います。
まとめ
- 睡眠に効果的な運動の時間帯は、寝る3時間前の30分前後くらいが良い
- 運動の負荷は、高負荷になり過ぎない程度
- 短期的な運動の効果は、あまり期待出来ない
- 運動習慣(最低でも週に150分程度)をつける事により、睡眠の改善だけでなく、(睡眠の改善が見られなかったとしても)気分の改善や安定に繋がる
となります。
なんだか以前から言われていたような事ですが、
個人差はあるけど、仕事が終わった後に少し汗を流す程度の運動をすると、寝つきも良くなって睡眠の質も上がるし、日中の気分も良くなる。
と言えそうです。
あなたの睡眠の質の向上や不安感の軽減のお役に立てたら嬉しいです。